メルレポ 2012年6月2日号(通巻第154号)
本日の担当者 オカヒデキ
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へんな協会の方々
第9回 “エクストリームアイロニングジャパン”
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オカヒデキ(第2、3号で「裁判員に選ばれた僕」執筆)
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この世にはスポーツの数だけ、その“競技団体”としての協会が存在する。たぶん。というより、新しいスポーツが生まれることと協会を作ることとイコールかも知れない。例えば、日本マウスパッド投げ連盟という競技団体は、そもそも某ラジオ局がキャンペーンで大量に作ったマウスパッドが余ったため「マウスパッドを投げて飛距離を競う競技にしたら、数をさばけないか」というバカバカしいアイデアで無理やりスポーツにしたことで生まれた団体だったりする。「マウスパッドをみんなで投げて飛距離を競いましょう」と誘われても頭のおかしい人だと思うだけだが、「日本マウスパッド投げ連盟主催の国際大会に参加しませんか」だと、なんだかよく分からない説得力があるのが不思議だ。だからスポーツの普及・発展にはどうしても協会が必要となる。
で、エクストリームアイロニングジャパンという団体がある。すでに各メディアで紹介されているので知っている人も多いかも知れないが、その名の通り、エクストリーム(過激な)アイロニング(アイロンがけ)というスポーツの団体だ。15年ほど前に海外の登山家が気分転換に屋外でアイロンがけをしたところ、すこぶる気持ち良かったので、山登りのアイロン台とスチームアイロンを持参し、山頂アイロンがけをしたのがはじまりらしい。これがネットを中心にムーブメントとなり世界のクライマーたちが断崖絶壁や巨大クレバス、世界の数千メートル級の山々でアイロンがけを試み続けている。
その日本代表である松澤等氏は、元々クライマーとして各地の山に挑戦してきた人物だが、海外の命知らずなアイロニストたちの存在を知りその魅力に取りつかれ、協会を発足。茨城県筑波山をホームマウンテンとして日々アイロンがけに励んでいる。松澤氏によれば「おふざけだと思われがちだが、エクストリームアイロニングで重要なのはアイロンがけ。いかにシャツのシワをしっかり伸ばすかに全精力を傾けないと真のアイロニストとは言えない」と話す。電気の通ってないアイロンを持ってポーズだけ取るのは、競技としてのエクストリームアイロニングの本質から外れるんだそうだ。ちなみに松澤氏は会社員として20年来、自らのシャツにアイロンをかけ続けており、アイロンがけのスキルもプロ級である。プロだったらクリーニング屋じゃないのかという気もするが、それはそれ。
真面目に書くのがバカバカしくなってきたが、松澤氏本人も真剣にやればやるほど、「俺はいったい何をやっているのだ」と心が折れかかると話す。先日、アイロン台とスチームアイロン、小型の発電機を背負って富士山を登頂し山頂でアイロンがけをした際には、思わず涙が流れたそうだ。「もう後戻りができない」と。
とにかく世界各国には極限状態でのアイロンがけの魅力に取りつかれた、命知らずな野郎どもがたくさんいて、数年に一度はエクストリームアイロニングの国際大会も行われている。また、今年の7月には五輪開催国ロンドンを会場に、テームズ川のほとりで競技が行われるらしい。これはおそらく将来的な五輪正式競技化を目指す狙いもあると思われる。ただ、このスポーツが五輪競技になるのはかなり厳しいようで、松澤氏はその理由を「だってスポーツじゃなくて家事ですから」と指摘している。
危険をかえりみず、世間の冷笑にも耐え極限状態のアイロンがけを続ける松澤氏。なぜそこまでして、アイロンがけを続けるのか聞くとこう答えてくれた。「そこにシワがあるから」。
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